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業種の垣根を越えた多様な連携でIoTサービスを提供

China Tower・于厚钢氏 C114単独インタビュー詳報

China Towerは2018年に香港上場を果たし、設立当初に掲げた「3段階戦略」の目標を達成。上場後は他業種との交流を積極的に推進し、通信業界に新たな価値とトレンドを創造している企業である。佟吉禄代表取締役は新年の挨拶で「2019年は5Gの実用化の初年度。多くの業種業態との協調を深めて発展していく上でも、大変重要な年である」と強調。China Towerの年初会議において、今後3年間の戦略「One Body Two Wings」を策定し、戦略的実行を加速しつつ、複数の事業の成長力を強化。新たな価値創造と成長を両立する企業を目指すことを表明している。

こうした中で、中国・上海で最近開催されたZETA中国アライアンス設立会の際に、China Tower産業開発部の于厚钢マーケティングディレクターがC114 China Communication Networkの単独インタビューに応じ、「共有の深化」の理念と成功事例を紹介。同社独自の強みを活かしたIoTサービス計画の概要を明らかにした。

共有の深化 ―― 「通信基地局」を「社会基地局」へ昇華

インタビューの中で、于厚钢氏は「新たなサービスは共有によって生まれ、共有によって発展する」と発言。その具体的内容は強いインパクトを与えた。

于厚钢氏は、これまで中国の大手通信事業者3社が世界最大規模の4Gネットワーク構築戦略を展開するに当たり、China Towerが迅速な支援をしてきたことに関し、「これまでは、基地局を共有することによって、通信業界は『投資抑制』と『急速な規模拡大』の両方を同時に実現してきた」と発言。そのうえで、China Towerは「共有という理念を社会に展開することを目標に掲げている」と述べた。具体的には、これまで「通信基地局」という存在であったシステムを、「社会基地局」へと劇的に変化・拡大させることを積極的に推進することにある。

つまり、これからは通信業界だけにとどまらず、あらゆる業界を超えた社会全体に総合的なサービスを提供できるインフラ作りを目指すということである。于厚钢氏は、すでに生態系環境、緊急管理、水管理など37の業界に、China Towerが保有している通信インフラリソースを通じてサービスを提供していると述べた。

このような戦略展開について、于厚钢氏は、China Towerが保有する通信インフラを社会に開放することは、同社自身にとっても大変重要なステップであると強調。「各通信インフラは省力化基盤として機能し、すべての省力化基盤のデータは端末を通して収集することが可能となる。つまり、通信基地局をあらゆるデータの収集口にするということである。今後通信基地局を、単なる通信インフラから、社会全体の総合情報提供インフラに変えていきたいと考えている。また将来私たちは、官公庁・企業向けに業界横断的なデータサービスを提供し、多種多様な業界データを収集し、共有できる基盤づくりを行う」と今後に向けた展望を述べた。

写真:China Tower産業開発部産業開発部の于厚钢マーケティングディレクター

現在、China Towerは他業態に向けて資源を開放する過程にあり、既に具体的な成果を獲得している。China Tower の2018財務報告書によれば、官公庁通信ネットワーク、環境品質監視ネットワーク、衛星信号地上ネットワーク、放送・テレビ通信ネットワークなど主要分野において、通信インフラ活用サービス、データサービス、動的な環境監視や保守サービスなどを積極的に展開。顧客のニーズに迅速に対応している。この結果2018年の同社の他業態に対するサービスの売上高は12.22億元に達し、売上高全体の割合は2017年の0.2%から1.7%へと劇的に伸びた。

また、于厚钢氏は適用事例の一つとして、中国地震庁との協力事業を紹介した。第13回5か年計画における全国ネットワークの震度警告強化に伴い、中国地震庁は全国31省のChina Towerに震度計を配備してデータ通信を提供。この貴重なデータを活用して地震対策などの構築につながれば、国民経済や国民生活に貢献し、しかも相互利益の創出にもつながる。

もう一つは環境保全領域における事例で、天津基地局と河北基地局に高層カメラを設置。基地局、ネットワーク、端末、プラットフォームなどのリソースを統合した上で、China Towerが地元の環境保護局に対して農作物焼却監視サービスを提供している。このサービスについては環境保護局から高い評価を得ており、この成果を踏まえて全国展開を検討している。

ZETA技術を活用した独自性の高いIoT事業サービス

China Tower は2018年に産業開発部を設立した後、通信産業以外の他業態サービス事業を積極的に展開している。于厚钢氏は今年の事業展開について、「インテリジェント共有」、「AIoT」、「AI」という3つの主要製品ブランドの構築に取り組んでいることを紹介。「AIoT」ブランドについて、さらにIoT系と垂直産業情報プロダクト系の2系統の構成としている。

China Tower は、「AIoT」のIoT分野の開発で活躍しているZETA China Allianceに加入。ZETA中国アライアンスの設立大会には設立メンバーとして参加した。ZETAはライセンスフリーIoT技術の一種で、従来のLPWAN(Low Power Wide Area Network)が持つ広域伝達基本性能に加え、メッシュ状ネットワークによる広域分散および双方向アクセス、低電力通信を提供できるという画期的な特徴を持つ。于厚钢氏はインタビューでZETA技術について「二つの発展方向性を持っている」と答えた。一つはZETA AIoTの特徴であるクラウド側からエッジまでの低消費電力通信技術だ。データはエッジ側で圧縮されるが情報量は圧縮されずに提供される。もう一つの重要な方向性は、フレキシブルIoTであるという。

また于厚钢氏は、他の通信事業者との違いについて、IoT事業におけるChina Towerの成長戦略の特長は「サービス区分、顧客ニーズ、サービスモデルの3区分での差別化にある」と述べた。

まず、海洋や鉱山などの通信ネットワークがカバーしにくい場所で、クライアントがクラスター通信、ビデオ監視、IoTセンサーのデータバック送信などの総合的なソリューションを求めるケースでは、通常はプライベートネットワークの構築が必要になる。China Towerのクライアントではない場合は、環境関連事例でいえばビデオ監視サービスと環境モニタリングデータサービスの両方が必要となるわけだ。しかし、China Towerであれば、それらを統合的に提供する新たな総合ソリューションを構築していくことができる。China Towerは、多種多様な業界で技術的な優位性を持っているパートナーとの協業を積極的に進めることで、単独ではできなかったサービスを提供していく。IoT事業を展開する際は、従来のネットワーク接続を販売する通信事業者のサービスとは異なる、エンドツーエンドのサービスを提供するという。
さらに于厚钢氏は、「中国の一部の省では、China Towerがスマート消防を始めている。パートナーとともに、設置、アフターメンテナンス、データ監視などのサービスを一元的にお客様に提供している」と紹介した。

China TowerのIoTサービスは高次元な共同発展モデルであり、キャリアライセンス周波数ネットワークのみならず、ライセンスフリーのLoRaやZETAの両方を使用できる強みを活かし、パートナーと共にお客様に統合ソリューションを提供することを目標としている。

写真:China TowerがZETA技術を用いたマンホールカバー監視アプリケーション

China TowerがZETA技術を選択した理由は、その技術的特徴に大きなメリットがあることに基づいている。例えば、上記の環境モニタリングデータ要件であるZETA技術は、非常に低コストで、帯域幅が狭く、簡易データ取得に適している。また、鉱山などのように物理的な深さが複雑で極端な環境では、NB-IoTやLoRaではデータが到達しないのに対し、ZETAの伝達は非常に良好であり、優れたネットワークが実現できる。

于厚钢氏は、「ZETAは独自の技術的優位性を持っている。IoT市場全体の中でも、狭帯域IoT市場をさらに細分化していく。 ZETA技術は、街灯、フレキシブルIoT、マンション監視、鉱山、海洋などにおける小さなデータの伝送に非常に適している。 中国のIoT市場は極めて大きい。ZETAは将来確実に独自の市場を持つだろう」と述べ、既に、省エネ街灯、マンホール監視、マンション管理、物流ラベルなど、さまざまな分野でZETA技術を採用していることも明らかにした。

たとえば物流ラベルについてもう少し具体的に言えば、ZETAフレキシブルIoT技術を活用したフレキシブル広域ラベルである。物流ラベルは一般的に貴重品の輸送を追跡・監視するために使用されており、消耗品であり、極力低コストであることが求められる。于厚钢氏によれば、ZETAはこの点でNB-IoTやLoRaと比べて大きな利点を持っている。現在は、一つの物流ラベルモジュール+バッテリーコストは20元未満だが、量産後のコストは3~5元にまで削減することが可能という。既に、今年前半にはChina Towerと中国郵政は上海と広西で共同物流ラベルの試行を開始。お客様に貴重品のリアルタイム追跡と開封通知サービスを提供しており、これも有望な市場としている。

このように、IoTは今後China Towerの新たな収益成長の柱となる可能性が非常に高い。自身が保有する通信市場ビジネスを支え、しかも、さらに多くの価値向上に寄与すると期待される。

China Tower Corporation Limited: 2014年3月16日設立。China Mobile, China Telecom, China Unicomによる共同出資。携帯電話の基地局のタワーの建設、管理などが中心事業で、すでに中国全土に200万タワーを展開している。2018年に香港でIPOに成功。現在LPWANの規格であるZETAを利用したIoTサービスに力を注いでおり、中国全土に展開している。


2019.5.27掲載 / NEWS