スマートビルディングを実現するためのIoT機器の無線通信環境は、どのように構築すればよいか ――このたび株式会社テクサー(本社:東京都港区、代表取締役社長:朱 強/以下、テクサー)は、東京建物株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役 社長執行役員:野村 均/以下、東京建物)、シリコンテクノロジー株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役社長:四方堂 第五郎/以下、シリコンテクノロジー)と連携。無線通信において極めて厳しい環境でも通信可能なZETA通信の特性を活用し、ビルディングの室内温度、湿度、照度、共用部の利用状況について、ZETA通信の有用性および取得されるデータの精度に関する実証実験を実施しました。
今回の実証実験では、テクサーが事業展開しているLPWA規格であるZETAによるスマートビルディングの実現に不可欠なIoT機器の無線通信環境構築についての有用性を検証しました。
実験の結果、100%完全なデータ伝送が行われ、ビル管理の省人化や合理化を図る遠隔監視システムを構築する際にはZETA通信が極めて有用であることが確認されました。
テクサーはこれまで、一般的な電波では通信が困難な僻地や島しょ部の傾斜地など、主として自然環境の中でZETA通信の特性をビジネスに適用する実験や事業を展開し、高い成果を上げてきました。今回は大都会のビル群内において、離れたビル同士間での通信にもZETA通信が極めて有効であることを証明できました。既に行った別の実証では、屋上に設置した基地局から、地下階に設置したセンサーまでを、複数の中継器を用いることで安定した監視の実現を確認しております。テクサーは今後、屋外でも屋内でも柔軟に通信エリアを拡張できるZETA通信の活用の場をさらに拡大していく方針です。
なお東京建物では、同社が管理するビルについてはZETA通信を導入した通信環境を段階的に整備することを決定。まず2019年内を目標に、東京の日本橋・八重洲・京橋エリアにおけるZETA通信網の拡大を目指すことになりました。
今回の実証実験では、IoT普及に貢献する通信方式LPWAN(Low Power Wide Area Network=※1=の一種、ZETA=※2=通信を採用。東京建物八重洲ビルの屋上に実験の基地局アンテナを設置し、同ビルから約230m離れた東京建物本社ビル7階に電池駆動の中継器、温湿度センサー、照度センサー、人感センサー(共用スペースの利用状況を遠隔監視するためのセンサー)を設置するというネットワークを組みました。
2018年12月1日~2019年3月1日までの実証実験期間中、温湿度、照度、人感の各センサーが取得したデータを、ZETA通信によって東京建物本社ビル7階から東京建物八重洲ビル屋上へ伝送。さらにデータをクラウド上のサーバーに自動的に蓄積しました。
一連の実証実験では、ZETA通信によるデータ伝送率は100%で、パケットロスはありませんでした。また各センサーから取得されたデータは、漏れなくクラウド上のサーバーに完全に蓄積されました。今回の実証実験の結果から、正確なデータ伝送が必須となるビル管理において、LPWANのZETA通信は極めて高い信頼性を有する通信方式であることが確認されたことになります。
ZETA通信を活用したシステムによって、離れた場所にあるビルであっても、室内の温湿度、照度や共用スペースの利用状況などさまざまな情報を遠隔的かつリアルタイムで可視化することができることが分かった意義は大きく、今後の活用に道を開くものです。たとえば、これまで人手に頼らざるを得なかったビル設備機器の点検を遠隔で行うことが可能となり、ビル管理コストの最適化に大きく貢献できます。また、ビルに入居する企業にとっても、オフィス空間の有効活用の検討や温湿度などの環境情報の把握が可能になると考えます。
今回の実証実験の成功を踏まえ、東京建物は管理するビルのスマートビルディング化に向けて、IoT機器活用を目的としたZETA通信環境の整備を推進する方針であり、ZETA通信システムを提供するテクサーは全面的に協力していきます。
テクサーはこれまで、電波が伝わりにくい僻地や島しょ部などでZETA通信を活用する事例の実績を積んできました。例えば宮崎県の山間部に設置したチョウザメ養殖場の生け簀の水位や水中の酸素量などのデータを遠隔的に収集するシステムで良質なキャビアを生産する仕組みを作ったり、広島県の島しょ部にある急峻な傾斜地に広がるレモン栽培地において土壌温度や水分量、ペーハー値などの数値を自動的かつ遠隔的に得られるシステムを展開し、水産業や農業におけるテクノロジーの活用推進へ成果を上げてきました。
今回は一転して舞台を都市部とし、自然界ではなく人工的建造物間におけるZETA通信の活用実験でしたが、同様に有意な成果が確認されました。
※1:省電力で広域をカバーできるネットワーク通信手法
※2:ZiFiSense社が提唱しているLPWANの規格で、超狭帯域(UNB: Ultra Narrow Band)による多チャンネルでの通信が可能、メッシュネットワークによる広域での分散アクセスが可能、双方向での低消費電力通信が可能、といった特長を持つ
株式会社テクサー
https://techsor.co.jp
東京建物株式会社
https://www.tatemono.com
シリコンテクノロジー株式会社
https://si-tech.co.jp